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おりおりの  第10回

(「隊友」〇四年三月号)転載

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

スノーシュー

ハイキング 

  蓼 科 山

 三月下旬、信州・蓼科山(二五三〇㍍)に登った。蓼科山は、その美しい円錐形の山容から、諏訪富士とも呼ばれ親しまれている。

 前の晩は一同、蓼科牧場の民宿に集まり、大騒ぎした。翌朝快晴。宿の車で登山口の女神茶屋まで送ってもらった。
 今回は雪が深いとのことでスノーシューを準備したが、雪面はバッチリ凍ってもぐる心配もなく、最初からアイゼンを装着した.。

 七時半登山開始。ダケカンバの中の直登道。次第に傾斜がキツくなり、アキレス腱が痛くなる程の急登が続く。
 十時頃、ダケカンバ林を抜けシラビソ帯に入ると傾斜が弱まり、ホッとさせられる。振り返ると、八子ヶ峰と白樺湖が目の下である。

 十一時にはシラビソも尽き、岩石帯の急登になり、アイゼンをきしらせながら登る。十一時半、広々とした蓼科山頂到着。眺望は三六〇度欲しいままと言いたいが、横なぐりの強風が雪を巻き上げ目を開けていられない。北・中央・南アルプスの遠望を確認し、早々に下山の途に就いた。

 下りは、将軍平を経て蓼科牧場に向かう。頂上を越えて北向き斜面になると今までとは一転、膝まで没する深雪になる。しかしパウダースノーでもあり、そのまま急斜面を転がるように将軍平まで駆け下った。

 十二時将軍平。ここは風もない。雪に埋もれた蓼科山荘の前で日差しを楽しみながらゆっくり昼食をとった。

 ここからスノーシューを着けた。積雪は二~三㍍だが、スノーシューで皆が思い思いに新雪をトレースしながらどんどん下るのが楽しい。時々集まって、コンパスで方向を確認する。

 十三時半、七合目の一ノ鳥居。十四時、スキー場リフト上駅。後はスキー場左縁に沿って林の中を下り、十四時半蓼科牧場バス停に出て、ようやくスノーシューから解放された。