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おりおりの  第11回

(「隊友」〇二年四月号)転載

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

早春の男体山

 
 去る年の四月も半ば過ぎ、日光・男体山(二四八四㍍)に出かけた。
 男体山は二荒山とも呼ばれる。
 日光東照宮に二荒山神社があり、男体山登山口にあるのがその中宮祠、男体山頂にあるのが奥宮である。

 前夜は中禅寺湖畔、二荒山神社門前の民宿に泊り、宿の主人の男体山講釈を聞きながら、ゆっくり山菜料理と地酒を楽しんだ。

 朝七時出発。男体山参拝登山の開山日は五月五日とのことで、まだ中宮の門が開いていない。
 失礼して山門脇の隙間から入山させていただいた。
 ブナやコメツガ林の参道をたどる。コメツガの幹が腰の高さまで痛々しく樹皮がめくれて裸になっている。鹿の仕業だろうか。

 三合目からは工事用車道を歩き、四合目で石鳥居をくぐり、再び樹林の中の急登になる。
 雑木にダケカンバが混じり始め、手元の高度計が一六五〇㍍を指すころから男体山特有の観音薙と呼ばれるガレ場の直登が始まった。
 息を切らしながらもグングン高度を稼ぐ。
 九時半、ようやくガレ場が終り、八合目の避難小屋にたどり着き一息入れた。

 この辺りから凍りついた雪道となり、慎重に足場を選んでの登山となる。
 九合目付近で樹林帯を抜け、視界が広がる。山頂到着十時半。
 山頂からの展望は素晴らしい。
 眼下の中禅寺湖、奥白根山はじめ日光の山々、皇海山がすぐ近くに見える。
 尾瀬の燧ヶ岳や会津駒ヶ岳も白く輝いて眺められる。
 好天に感謝し、奥宮にお賽銭を弾んで拝礼した。

 ゆっくり昼食休憩の後は、裏登山道を下山した。
 火口壁を北になぞり、崩壊斜面から北に急下降してひたすら下り、志津小屋到着が午後一時。志津峠からはカラマツ林の車道をテクテク歩いて、三本松バス停到着は午後三時となった。