新緑の妙義山

 五月半ば、群馬県・妙義山(1094㍍)へハイキングに出かけた。

 妙義山は小さな山塊だが、奇岩林立するその猛々しいたたずまいは他に類がない。しかし今回は、中腹道の散策を楽しむ、至極のんびりした旅である。

 前夜は、妙義神社参道前に宿をとった。山菜とコンニャク主体のひなびた料理がおいしかった。

 翌朝八時半出発。まず参道の長い石段を登って妙義神社に参拝する。十六菊ご紋をいただく社殿は豪華な総漆塗りで、その格式の程がしのばれる。

 神社の境内から、妙義山の中腹を巡る中ノ道遊歩道が始まる。所々で岩峰の間を抜けたり、沢筋をヘツったり、若干の登り下りはあるが、ほとんどが雑木林の中をたどる坦々とした散歩道である。
 全身が染まるような新緑の中、フィトンチッドを胸いっぱいに吸い込みながらの健康ハイキングとなった。

 十一時、第四石門をくぐって石門広場到着。この広場から見下ろす南面の眺望「日暮らしの景」は、奇岩林立し足元が寒くなるほどすさまじい。広場に荷物を置いて、第一、第二、第三石門を巡ったり、大砲岩に登ったりして、童心に帰って遊ぶ。石門巡りは「蟹の横這い」「縦割り」など、何本かのクサリ場があってスリルを味わえるが、人気コースだけあって順番待ちが大変だった。

 午後一時、帰路に着く。帰りは、見晴台経由で中之岳神社に下る。中之岳神社の裏の高さ三〇㍍程の轟岩に物見高く、ハシゴとクサリを伝って登り、本日最後の眺望を楽しんだ。

 神社前から、その名も美しい「桜の里」を中村部落まで下る。しかし一同、路傍の山菜摘みに夢中で、花を愛でるのは二の次になってしまった。

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おりおりの  第12回

「隊友」〇一年五月号転載

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長