わが国第二の高峰

  北 岳


 八月上旬、南アルプス北岳(三一九二㍍)に登った。北岳は、富士山に次ぐわが国第二の高峰である。

 甲府からの広河原行きバスはほぼ満員。十一時半、野呂川の吊り橋を渡り広河原山荘の脇から登山道に入る。雑木林の中、岩を乗り越し乗り越しの急な登りであるが、行き交う人が多い。さすがは人気の山である。今日は白根御池小屋泊りののんびりした行程。十五時、白根御池小屋前のキャンプ場にテントを張った。夕食時、涼風に吹かれながらの缶ビールに、キャンプ仲間同士の山談義が弾んだ。

 翌朝四時出発。ヘッドランプを頼りに草スベリを登る。ここは北岳有数のお花畑、四時半頃ようやく薄明かるくなり周囲の花々が見え始めた。ホウオウシャジン、グンナイフウロ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、タカネナデシコ等、赤、白、黄、紫の色とりどりの花が草原を埋め尽くす様は壮観だった。

 六時、小太郎尾根に顔を出した。横風が吹き上げてくる。ヤッケを着て、ハイマツの稜線の登り。六時半に肩ノ小屋に到着し、ストーブに一息ついた。

 小屋からは岩場の登り約四〇分で北岳頂上。残念ながらガスで眺望ゼロ。それでも風陰に座り込みコーヒーを沸かして、つかのまの頂上滞在を楽しんだ。

 七時半頂上発、稜線を南に下る。霧に濡れた岩場の慎重な下降。足元の岩陰には時々、ホウオウシャジン、ミネズオウ、タカネナデシコなどがつつましやかに咲いて見える。

 八時、八本歯ノコルから大樺沢に下る。岩場のあちこちにハシゴが取り付けられ、急な下りを木にすがりながら下る。雪渓が現れ、左岸を慎重にルートを選びながら下降する。九時半、二俣に到着。ここも高山植物の宝庫で大勢の人が花を愛でて休んでいるが、こちらは先を急ぎ、広河原十二時発のバスにようやく間に合った。

おりおりの  第14回

「隊友」〇六年八月号転載
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作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長