作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

おりおりの  第16回

(「隊友」〇三年十月号)転載

 

紅葉の那須岳

 十月中旬、紅葉に誘われて那須岳(一九一七㍍)に出かけた。私が習いたての頃に覚えた謡曲「殺生石」で知られた山でもある。

 初日は茶臼岳に登って三斗小屋温泉泊り、二日目は朝日岳、三本槍岳に登って北温泉に下りることにした。

 ロープウェー山麓駅から十五分程登った峰ノ茶屋で、熱々のおでんを注文し昼食をとる。

 十二時、峰ノ茶屋を発って茶臼岳に向かう。行き交う人のなんと多いこと。二〇分程で樹林帯を脱け、露岩帯の登りになる。右に荒々しく裂けた谷を隔てて朝日岳の岩峰を仰ぐ。十二時五十分、峠ノ茶屋。ここの広場はまるで銀座並みの賑わいである。

 ここに荷物をデポして茶臼岳に向かう。ゴロゴロした岩の登り。時々岩の間から蒸気が噴き出ている。十三時半茶臼岳頂上。生憎のガスで展望ゼロだった。下りは一応火口お鉢巡りコースをたどり十四時半、峠ノ茶屋帰着。後は三斗小屋温泉への下り。樹林帯の中の紅葉のトンネルを潜りながらの下りを楽しんだ。

 十六時、三斗小屋温泉。昔に変わらぬ大黒屋と煙草屋の二軒の古びたたたずまいがあった。今回は大黒屋泊り。温泉も早々に早速、酒盛りが始まった。

 翌朝六時半出発。ダケカンバ林の急登の後は、岩屑斜面の登りになる。ドウダンツツジの紅葉が鮮やかである。八時、隠居倉ノ頭。茶臼岳が大きく見える。八時四五分熊見尾根の主稜線に出た後、朝日岳を往復した。岩畳々の朝日岳の山頂は狭いが眺望は抜群である。

 後は主稜線をたどり、北温泉分岐に荷を置いて三本槍岳を往復する。山頂十時半。下りは途中で昼食など取りながら、のんびり北温泉に向かった。途中の朝日岳や鬼面山の山腹を彩る紅葉が息を呑む程に鮮やかだった。北温泉到着は午後二時半となった。

茶臼岳からの朝日岳
隠居倉からの三本槍
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三斗小屋温泉