作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

岩肌を楽しむ 
                 小 川 山

 十一月上旬、奥秩父・小川山(二四一八㍍)に出かけた。
 奥秩父の主脈から外れた小川山は訪れる人も少ない静かな山である。
 しかし明るい岩肌、夏のシャクナゲ、秋の紅葉、山頂付近の苔のシトネなど、この山の魅力は語るに事欠かない。

 今回は、初日が金峰山荘泊り、二日目は小川山に登り金峰山小屋泊り、三日目に金峰山に登り増冨温泉に下山する行程である。

 初日、信濃川上駅から村営バスに乗るつもりが、駅に降り立ったら山荘の車に迎えられた。聞けば、今夜の泊りは我々二人だけとのこと。十四時半山荘着。

 金峰山荘のある廻目平は、四周を屋根岩、ハコヤ岩、仏岩、父・母岩などの岩峰群に囲まれた岩登りのメッカである。
 早速カメラ片手に、一周一時間半の屋根岩パノラマコースの散歩に出かけた。
 途中の第一岩峰展望台から眺めた周囲の山々の紅葉は、今が真っ盛りだった。

 翌朝五時半出発。薄暗い林の中の急登三〇分で尾根筋に出ると、この山特有の明るい花崗岩の岩尾根となった。
 次々と立ちはだかる岩峰を、ペンキのルート標示頼りに登る。
 そのうちシャクナゲの茂みをかき分けかき分けの登りとなった。花の季節にはさぞかし見事なことだろう。

 七時、展望台と刻書された大岩の上によじ登って朝食休憩。
 奥秩父の山々の眺望抜群。遠く富士山が中空に浮かんで見えた。

 展望台からは又もやシャクナゲをかき分けながらの登り。
 小さな岩峰を次々にカラみ、最後の大岩峰、弘法岩は山腹を巻く急登。
 その後は一転して、森閑とした黒木の原生林の中の登りとなる。
 地表を深々とした苔が埋め尽くす。
 小川山山頂到着九時。
 樹林に囲まれた山頂は、静けさの中に包まれていた。

 その夜は金峰山小屋泊り。
 翌日は金峰山山頂でご来光を拝んだ後、富士見平、瑞牆山荘経由で増冨温泉に下った。
 道中、限りなく続く紅葉の供応に酔いしれた

今が盛りの紅葉
展望岩からの小川山
展望岩からのハコヤ岩
小川山山頂

おりおりの  第17回


(「隊友」〇八年十一月号

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