初冬の国師ヶ岳

 

 十一月中旬、奥秩父・国師ヶ岳(二五九二㍍)に登った。石和温泉泊りの懇親会を兼ねたちょっとした山行である。

 十時半、予約したタクシーで塩山駅から大弛峠に向かう。特別許可だというスパイクタイヤを装着した登山タクシーは、アイスバーン状の峰越林道をバンバン登って行く。晴天に恵まれ、道路脇を埋め尽くすカラマツ林の黄金色が美しい。

 十二時、大弛峠到着。峠にひっそりたたずむ大弛小屋の前のベンチで昼食をとり、身支度を整える。冬山装備でしっかり完全武装した。

 十二時半出発。小屋の横から登山道に入り、原生林の中を登る。積雪十㌢程度。北西風がパウダースノウを巻き上げる中を、雪をキシキシと踏み鳴らしながらの登山である。ひとしきり急登を続け十三時十五分、前国師岳頂上。後は広い尾根道となり、途中で北奥千丈岳への道を分け、十三時半あっけなく国師ヶ岳山頂に到着した。

 南面に展望が開け、はるかに富士山や南アルプスが見えるが、寒風の吹きさらしに辟易して、早々に退散することにした。

 下山途中で、奥秩父の最高峰・北奥千丈岳(二六〇一㍍)を往復した。北奥千丈岳頂上には十四時到着。ハイマツ帯の中に花崗岩の巨岩が散在する庭園風の山頂広場はちょっと魅力的である。金峰山や小川山の峰々の彼方に、八ヶ岳がうっすら見えた。

 前国師からは、夢の庭園を回って下った。ハイマツの中に点在する巨岩の上を渡された鉄骨組み上げの展望テラス風の回遊道の散策は楽しい。その景観は、かって訪ねた米国ノースカロライナ州のチムニーロックガーデンを正にほうふつとさせた。

 十四時五十分大弛小屋帰着。迎えのタクシーで塩山に下る途中、部落部落の軒下を彩る柿スダレが見物だった。

山麓の唐松林

国師ヶ岳山頂風景

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

おりおりの  第18回


(「隊友」〇三年十一月号)

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国師ヶ岳からの奥秩

国師ヶ岳山頂にて