日だまりの雪道散歩
浅 間 嶺
一月下旬、奥多摩・浅間尾根を歩いた。浅間嶺(九〇三㍍)を主峰とする浅間尾根は、武蔵と甲斐を結んだかっての古甲州路であるが、今は東京都民に人気のハイキングコースである。
五日市駅発の数馬行きバスを十時、浅間尾根登山口で下車。南秋川の橋を渡り、集落の中の急な舗装路を登って行く。 一〇分程で民宿「浅間の湯」の前で舗装は切れ登山路となる。
杉林の中のゆったりとしたジグザグ登り。
十一時、道標と石仏のある浅間尾根に出る。積雪約一〇㌢。縦走路を右に取る。若干の上り下りはあるが、どこまでも緩やかな尾根道。
所々に杉林を伐り開けた展望所があり、向かいの笹尾根や反対側の御前山がよく見える。そのうち、杉林が明るい雑木林に変わる。雪に映える日差しがまぶしく、慌ててサングラスをかけた。
十二時四十分浅間高原。広い園地にきれいな休憩舎があり、先客数組が賑やかに食事中。浅間嶺はそこから急斜面を二~三分登った所。山頂のベンチを占領して昼食休憩。無風快晴で雪の照り返しが暑い程の陽気。前を見れば笹尾根が一望に、振り返れば御前山、大岳山が堂々と。御前山の左奥に奥秩父の山々がはるかに光って見えた。
三〇分の大休止の後、浅間尾根を更に東に進む。雑木林の中、下り気味ののどかな散歩が続く。ワラ屋根の一軒家を過ぎると道は林道になり、十四時峠の茶屋。ここから真っ正面に見る大岳山が大きい。
ここから車道歩きになる。凍結したワダチ跡を避けて慎重に足元を選びながらの下り。十四時五十分、払沢ノ滝入口に到着した。滝見物の観光客が多い。滝は茶店の立ち並ぶ遊歩道を一〇分程の距離にある。半ば氷結した落差六〇㍍の名瀑は、なかなかの迫力で見応えがあった。
帰路、茶店のオデンの匂いに誘われて、つい座りこんで熱カンに手を出したら、帰りの予定のバスを取り逃がした。
作者プロフィール
柚木 文夫氏
千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長
おりおりの 山 第19回
(「隊友」〇九年一月号)
浅間嶺から見る御前山・大岳山
払沢の滝
浅間嶺山頂
浅間尾根遠望