おりおりの

一一六号(「隊友」〇九年十一月号 転載)

多摩川の源流 笠 取 山

 十一月初旬、奥秩父・笠取山(一九五三b)に出かけた。
 多摩川、 荒川、富士川の源流の山である。今回はちょっと欲張って、飛竜山(二〇七七b)も合わせ登る行程にした.同行はおなじみのM氏。

 初日は後山林道をたどって三条ノ湯泊まり。
 翌日は飛竜山に登った後、将監峠を越え笠取小屋にたどり着いた。
 朝から延々一〇時間半の長丁場だった。
 笠取小屋はこの時期、無人であるが、予めの連絡で無人期用小屋を利用させてもらった。

 三日目も快晴。六時半出発。雁峠分岐のすぐ上の草原状の丘の上に野外卓とベンチが設けられ、多摩川・荒川・富士川の分水嶺のことを紹介した案内板がある。ここに荷物をデポし、軽装で笠取山を往復することにした。

 カラマツ林の道を一〇分程で、多摩川の最初の一滴が滴り落ちているという水干に達する。何のことはない、ただの小さな岩の凹みである。
 そのまま山腹をヘツって進み、シラベ尾根分岐点から笠取山頂を目指す。
 間もなく主稜線に顔を出し、シャクナゲの茂みをかき分けながら西に尾根筋をたどり八時、笠取山の標柱のある山頂に達した。
 
三六〇度遮るものもない素晴らしい眺望である。
 金峰、甲武信、和名倉、飛竜など奥秩父の山々、甲斐駒から光に至る南アルプスの峰々、富士、大菩薩、三ツ峠など、二〇万分の一の地図を広げての標定に時の経つのを忘れた。
 
主稜線経由で元の雁峠分岐に戻るべく、更に稜線を西にたどる。
 一〇分程進み、荷物デポが見下ろせるピークまで来ると、ここにも笠取山頂の標識があるので笑った。ここをニセ笠取と名付けた。

 荷物を取り、雁峠を越えて亀田林業林道を下る。沢を埋め尽くす紅葉が鮮やかだった。十二時新地平着。バス待ち三〇分間のビールタイム。
 
帰路はバスを市営温泉「花かげの湯」で途中下車し、引き続き風呂とビールの二次会。

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作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
山岳部部長歴任