皇海山全景

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おりおりの  第23回


(「隊友」〇一年四月号)

皇海山頂

炎天下の行軍

鋸 山

日帰りの百名山 皇海山

 6月上旬、栃木・群馬県境の皇海山(2144㍍)に登った。
 皇海山(スカイサン)という奇妙な読み方のこの山は、深田久弥の「日本百名山」にもその名を連ねる名峰である。
 若い頃に栃木県側の庚申山から鋸山11峰を越えてやっと頂上を踏んだ記憶があるが、今回は群馬県側の不動沢経由で日帰り登山とシャレこんだ。

 朝4時、前夜の宿・吹割温泉にお願いした車で、栗原川林道を登山口の皇海橋に向かった。
 ところが途中土砂崩れに阻まれ5時、とうとう車を断念して徒歩行進に切り替えた。
 大渓谷の中の山腹道を延々と歩く有り様は、まるでかって経験したヒマラヤでのキャラバンそのものだった。

 7時、皇海橋に到着して朝食。7時半登山開始。沢の中を右に左に渡り返し、岩を乗り越し乗り越し高度を上げていく。林相がカラマツからミズナラ、ダケカンバに変わる頃からは、傾斜も増してナメ滝状の岩場も現れ結構緊張する。そんな折時々、色鮮やかなヤシオツツジやミネザクラが出迎えてくれるのが嬉しい。最後の急斜面の直登を木にすがりながら登り9時半、県境コルに飛び出した。

 前方の鋸山の天を突く勇姿に魅せられる。
 往復したいところだが時間もないので断念した。
 皇海山頂に向け県境尾根の最後の登りが待っている。
 鋸山を背に、コメツガ、オオシラビソの原生林の中の気持ち良い尾根登り。
 最後に、大岩の間を通り、修験者寄進の青銅の剣の横を抜けたところに山頂があった。

 10時半、皇海山頂到着。昼食休憩。木の間越しの眺望は、上州武尊に男体、日光白根など、また至仏、燧などの懐かしい山々が手に取るように見えた。

 11時山頂発で往路と同じ経路を下る。13時皇海橋到着。その後、炎天下2時間の「死の行軍」にすっかりアゴを出し、午後3時やっと出迎えの車に収容された。

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長