雲上の白砂青松

              鳳凰三山

 

 7月中旬、南アルプス鳳凰三山に出かけた。
 薬師岳(2780㍍)、観音岳(2840㍍)、地蔵岳(2764㍍)の3山から成るこの山は、ハイマツと白砂の明るい山稜をたどりながら展望を楽しむ人気の山である。

 10時45分、甲府からのバスを降りた夜叉神峠登山口から登山が始まる。
 ツガやシラビソの原生林の中の長い長い登り。
 夜叉神峠、杖立峠、苺平、南御室小屋を経て、今夜の宿、薬師岳小屋に着いたのが午後3時半。
 暑い日差しの中の行軍でバテバテだった。

 翌朝5時出発。小屋から10分の登りで薬師岳。山頂に座りこみ、雲海をなめて昇る荘厳な日の出に合掌した。

 次いで観音岳に向かう。白砂にハイマツの緑が映える稜線は、正に白砂青松の趣きである。
 足元には時折、タカネビランジ、タカネツメクサなどが愛らしい姿を見せてくれる。
 巨岩の重なり合う観音岳頂上到着5時45分。眺望360度。とりわけ正面にそそり立つ地蔵岳のオベリスクの特異な姿に魅せられた。

 観音岳から下り、6時15分鳳凰小屋分岐のコルで朝食休憩。その後、急な岩場を登り7時、赤抜沢ノ頭。地蔵岳のオベリスクがすぐ目の前である。
 オベリスクに登る元気はないが基部まで行こうと、目の下の賽ノ河原へ下りた。さくばくとした河原に声もなくたたずむお地蔵さんの顔々が痛々しい。オベリスクは、ここから見上げるだけで引き返した。

 赤抜沢ノ頭を下った後、高嶺への本日最後の登りがある。  キツイ岩稜登り。8時高嶺山頂。ようやく日も高くなり、ここからの眺望が素晴らしかった。
 目の前の甲斐駒、北岳、農鳥岳の威容はド迫力。遠く八ヶ岳、奥秩父の山並みも良く見渡せた。

 高嶺からの岩場の急下降に肝を冷やし、後は白鳳峠経由で樹林帯の中をひたすら下り、やっと正午、広河原バス停に到着した。

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作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

おりおりの  第24回


「隊友」〇六年七月号

賽の河原からのオべりクス
 
 砂払岳からの薬師岳
 
薬師岳山頂風景
 
 高嶺からの北岳