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作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長


おりおりの  第25回

 黒部五郎岳山小屋
黒部五郎岳(分岐点)
 
 黒部五郎カール
 
  花と水と岩の庭園

   黒部五郎岳


 
8月半ば頃、北アルプス・黒部五郎岳(2840㍍)に出かけた。
 北アルプス最奥のこの山は、その東面に抱えるカールの花と水と岩が織りなす美しさゆえに、北アルプスの宝石箱とも言われている。

 今回の旅は、初日が新穂高温泉を発って双六池まで、2日目に三俣蓮華岳、黒部五郎岳と縦走して太郎兵衛平まで、3日目にはもう富山に下山というちょっとした強行軍だった。

 初日、夜行バスで新穂高温泉着。小池新道経由で鏡平から弓折岳の稜線を辿り15時頃、双六小屋に到着した。

 翌日は4時半出発。双六岳は山頂をパスして巻道ルートを取り、花の草原漫歩を楽しんだ。
 富山・長野・岐阜県境の三俣蓮華岳(2841㍍)山頂到着は6時半。残念ながらガスの中で展望ゼロ。

 次いで樹林帯の中の急勾配を木の枝にすがりながら下り8時、五郎平到着。美しい草原の中に赤屋根の黒部五郎小屋は、西洋の絵ハガキを見るようなメルヘンチックなたたずまいである。

 一休みの後、黒部五郎岳に向かう。稜線から外れ、灌木帯をトラバース気味に五郎沢右俣に向かう。

 次々と小沢が現れ、色とりどりの花々が出迎えてくれる。
 そして9時半過ぎ、黒部五郎岳を頭上に仰ぐカールの底に出た。

 周囲を岩の屏風に囲まれた草原は、庭石のような巨岩が点在し、雪融けの小川が流れ、チングルマやコバイケイソウの咲き乱れる夢の庭園だった。
 ここで岩の上で日なたぼっこしながら、しばしの休憩と瞑想の一時。

 次いで黒部五郎山頂には、雪渓のふちのガレた急斜面を登り、10時45分到着。ここも展望はモヤのため今一つ。

 後は太郎兵衛平に向け長い長い稜線をひたすらたどる。秘境・雲ノ平の広がりを右下に眺めながら、赤木岳、北ノ俣岳、太郎山と過ぎ、今夜の宿・太郎平小屋到着は15時半となった。

 翌日はただ下るだけ。折立平バスターミナルまでは3時間半だった。