山頂からの白峰三山
 

甲州・蛾ヶ岳-雪山歩き-

 

 2月も半ば過ぎ、冬山初心者の人たちを案内して甲州・蛾ヶ岳
(ヒルガダケ)(1279㍍)に登った。
 特に滑落危険箇所もなく、初めての雪山歩きに手頃かと選んだ山である。

 四尾連湖入口駐車場に車を置き、スパッツ、軽アイゼンで足固めをして、10時半出発。
 里で練習してきたはずだが、いざ現場となると、軽アイゼンの着装の一人一人の点検にエラく手間暇がかかった。

 積雪は20㌢程度だが、ルートはよく踏み固められラッセルの心配もない。
 明るいクヌギ林の中の緩やかなジグザグ登り。所々、路面がテロンテロンに凍っているが、アイゼンがよく効いて安心である。

 11時、大畠山東肩に出て、標識に従い尾根道を右に取る。ほとんど高低差のないカラマツ林の中の散歩道である。
 11時45分、蛾ヶ岳西肩。路傍の石板にレリーフ様に彫られた六地蔵にあいさつする。ここから傾斜が急になり、山頂に向かってほぼ直登する。

 12時10分、蛾ヶ岳山頂。風もない晴天。山頂を覆うパウダースノーが目に痛い。白皚々の南アルプスの峰々が正面横一線に並ぶ。北方にははるかに八ヶ岳、振り返ると富士山の雄姿が視界を圧する。
 初めての冬山で最高の眺望に恵まれ、一同大はしゃぎだった。

 30分の昼食休憩の後、帰路に就く。急傾斜の下りもアイゼンのおかげで楽チンである。大畠山東肩分岐に戻り、一応、大畠山を往復した。
 頂上にはパラボラアンテナの局舎があるが、樹林に囲まれ視界は全くない。往復20分
で分岐に戻り、そのまま尾根道を西に約30分、タラタラと下って四尾連峠に出る。野沢一詩碑などがある風情のある峠であるが、私たちはそのまま四尾連湖に下った。

 四尾連湖到着が午後2時20分。周囲を山に囲まれ、ひっそり静まる「山の寂しい湖」である。湖畔の宿で甘酒を堪能し、やっと人心地がついた。

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おりおりの  第31回

                
富士を背に昼食
 
身延町から蛾ヶ岳
 
四尾連湖
雪の六地蔵

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長