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おりおりの  第31回

                
坂本集落から仰ぐ股峠
西岳一峰からの下降
 
西岳二峰から望む主峰(西岳一峰
 

スリルの岩稜伝い

西上州・二子山

 4月中旬、西上州・二子山(1166㍍)に登った。二子山という名前の山は全国に数多あるが、今回は群馬・埼玉県境の二子山である。

 10時半、小鹿野町坂本のバス停を出発する。
 坂本の集落を抜けると、正面に難攻不落の城砦にも似た二子山の岩壁を仰ぎ見る。右が東岳、左が西岳、真ん中のU字状鞍部が股峠である。

 民宿登人の横手から沢の中のほの暗い登山道を股峠に向かう。 杉林が雑木に変わる頃、道はジグザグの急登となり、一汗かいて12時、股峠に到着した。
 ここはカタクリの群生地として知られているが、まだ花の盛りには若干早く、花はチラホラだった。

 東岳登頂は時間の関係で断念し、ここから直路、西岳に向かった。
 まず狭い急な稜線を雑木につかまりながら登り、岩稜上のルートに出た後は、ヤセ尾根の右側を巻き気味に登る。
 古生代石灰岩の岩場は風蝕・雨蝕で出来た窪みが細かく、慎重にホールド・スタンスを選びながらの登攀である。
 最後に5㍍程の垂直に近いクラックを冷や汗をかきながら登り、西岳山頂到着は12時50分となった。
 頂上を彩るマンサクの花が今が盛りだった。

 5~6人がやっと坐れる程度の狭い山頂に各々場所を占領して昼食をとる。
 崖っぷちに投げ出した足の真下に坂本の集落が見える。
 モヤってはいるが、眼前には両神山が大きく立ちはだかり、その後方に雲取山などの奥秩父の山々が霞んで見えた。

 13時半出発で、帰路は西岳二峰を越え魚尾道峠経由のコースを取った。
 先ずはヤセ尾根の岩稜の下降。ほぼ垂直に近い岩場をホールド・スタンスを確かめながら慎重に三点確保で下る。
 そして又、鋭い岩角のヤセ尾根を攀じ
て30分程で西岳二峰。更にまた、ナイフリッジ状の岩稜の慎重な下り。
 垂直に近い岩場の下降は、高所恐怖症の人にはいささか酷な感じである。
 最後にすっぱり切れた稜線の西端で尾根を左に外れて10㍍程の垂直岩壁を、垂らされたクサリを頼りに急降下した。

 岩場を終え、後はのんびりした林の中の下り道散歩を楽しみ、坂本集落帰着が丁度16時。集落には今時、梅、桃、櫻がみんな一緒にゴチャマゼになって咲いていた。

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

魚尾道峠から仰ぐ二子山の岩峯