山頂直下から仰ぐ白馬岳
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白馬三山(八方尾根から)
お花畑


おりおりの  第35回

                
杓子・鑓(白馬山頂から)

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

                   

白馬の大雪渓

7月、夏山シーズンの到来である。大雪渓とお花畑にあこがれて白馬岳(2933㍍)を目指す人も多かろう。白馬岳は、北アルプスの中でも屈指の人気を誇る名山である。

 7月下旬、日本アルプスが初めてというT氏と一緒に白馬岳に出かけた。

 白馬駅からの猿倉行きのバスは、白馬岳登山の客で満員である。猿倉から白馬雪渓末端の白馬尻までは樹林帯の中の緩やかな登り約1時間。前夜の寝不足で、猿倉からの行軍にバテ気味だったT氏も、白馬尻で目の前に立ちはだかる大雪渓を前にして、さすがに感激の面持ちであった。

 一息入れてからアイゼンを着けて登りにかかる。雪渓を渡る風は冷たく夏を忘れさせる。雪渓中央の印のついたルートをひたすら直登である。時々、音を立てて跳ね落ちてくる落石に肝を冷やす。約2時間で中腹の葱平着。高山植物の咲く草付き帯をジグザグに急登し小雪渓を越える。更にお花畑の中をひたすら登り、2時間余でようやく国境稜線に出た。

 稜線付近にある村営頂上宿舎と白馬山荘は、どちらもホテル並みの立派な山小屋である。私たちは白馬山荘に宿をとった。

 白馬山荘から白馬岳頂上は約15分である。翌日、頂上にご来光を仰ぎに出かけた。前日とは打って変わった上天気となり、槍・穂高から富士山、遠く南アルプスの山並みまでが見渡せた。T氏を叱咤激励しつつここまで連れてきた甲斐があった。

 帰りは白馬鑓温泉を経由して下山した。白馬鑓温泉(2100㍍)は、日本一標高の高い所にある温泉である。

先ず杓子岳へは、丸山を越えて黒部側を巻き気味の登り約1時間。次いで白馬鑓ヶ岳へは岩屑道のジグザグ登りを更に1時間。白馬鑓ヶ岳から10分程南に進んだ所で国境稜線に別れを告げ、白馬鑓温泉に向かい急斜面のジグザグ下り。しかしその後、岩場のハシゴやクサリ場で、先行の団体組の
順番待ちにすっかり時間をとられてしまい、T氏念願の野天風呂はあきらめざるを得なかった。本日の行程8時間で、猿倉到着は夕方近くなり、やっと最終バスに間に合った。

白馬大雪渓