尾瀬・至仏山-お花畑を堪能-



 
 8月初め、尾瀬・至仏山(2228㍍)に登った。この山も、深田久弥の日本百名山の一つである。

 前夜は、戸倉のなじみのスキー民宿で昔仲間と大酒盛り。
 翌朝ちょっと油断したら、乗合タクシーがもう長蛇の列で、鳩待峠到着が8時半近くになってしまった。尾瀬観光の客のなんと多いこと。

 鳩待峠8時半出発で至仏山に向かう。雑木林の中、よく整備された木道と木段の登り。
 9時半頃から、道は緩やかな起伏に変り、時折、木の間越しに至仏、燧の英姿が望まれた。

 10時20分、主稜線に出る。この辺をオヤマ沢田代といい、高山植物の宝庫。ハクサンイチゲ、ハクサンコザクラ、チングルマ、ミヤマキンポウゲなどが、木道の左右を埋め尽くす。
 11時に小至仏山を越えた辺りからは、ミヤマツメクサ、イブキジャコウソウ、タカネシオガマ、タカネバラなどが目を楽しませてくれる。
 中でもタカネナデシコのあでやかなピンク色がひときわ色濃い。至仏山のタカネナデシコは天下一品。

 12時至仏山頂。大分ガスってきたが、ここの360度の展望がまた素晴らしい。
 雄大な尾瀬ヶ原の全景と燧ヶ岳の威容、谷川連峰、会津や日光の山々も眺められた。

 12時40分、ようやく腰を上げ、山ノ鼻コースを下った。
 尾瀬ヶ原と燧ヶ岳を正面に見ながらの一直線の急降下は気分爽快と言いたいところだが、このコース特有の蛇紋岩の露岩の連続は滑りそうで、実は恐る恐るの足運びである。
 誰かが、これから数日蛇紋岩の夢にウナサレそうと言ったが、正に実感である。

 ホウホウのていで、やっと14時半、山ノ鼻到着。小屋前のベンチで至仏山の雄姿を改めて眺めながら一息入れた。
 帰りは川上川に沿って、ダケカンバ林の中の木道ののんびりとした散歩。オシャベリを楽しみながら16時過ぎ、鳩待峠に帰り着いた。

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おりおりの  第36回

                
オヤマ沢田代を行く
小至仏山頂と至仏山
 

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

竜宮十字路からの至仏山
至仏山頂
タカネナデシコ