会員のページへ
甲斐駒ヶ岳の威容
 甲 斐 駒 ケ 岳

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長


おりおりの    第40回

                
戸台の河原から仰ぐ甲斐駒本峰-駒津峰-双児山
 
山頂から見下ろす直降ルート


   甲斐駒山頂からの観望(北岳)
 

   甲斐駒山頂からの観望(仙丈ヶ岳)
 

   甲斐駒山頂からの観望(鳳凰三山と富士)

甲斐駒ヶ岳-氷雪を愛でて-


                   

 氷雪の季節を待ち焦がれた12月下旬、若い人たちにお供して甲斐駒ヶ岳(2967㍍)に出かけた。泊りは、無人の仙水小屋を利用させてもらった。

 早朝、戸台の駐車場出発。八丁坂の登りに大汗をかいて、仙水小屋にたどり着いたのは日も暮れた16時半だった。ガランとした無人小屋の何と寒いこと。 

 翌朝8時、冬山完全装備に身を固め出発、仙水峠経由で甲斐駒ヶ岳に向かう。快晴、気温零下15度、積雪15~20㌢。絶好の登頂日和である。

 樹林帯の中、岩ゴーロの急な登りが続く。一汗かいて10時半頃、駒津峰山頂に到着。この頂きからの展望は絶品である。とりわけ、北岳、仙丈岳の眺めが素晴らしい。これから登る駒ヶ岳の巨体が、また豪快である。

 駒津峰からは岩場のヤセ尾根の登り下りとなり、まもなく六方石のコル。
ここで岩稜直登コースと巻き道コースが分かれており、迷わず右の巻き道コースに入った。ところがダケカンバの斜面のトラバースの所々、沢状の吹き溜まりを越える箇所でクラストした雪面にクラックが入り、今にもブロックごと崩れそうで怖い。見張りを立てながらの通過はヒヤヒヤモノだった。

 摩利支天への道を右に見送り、最後の氷化したザラ場を直登して12時半、甲斐駒ヶ岳頂上到着。山頂の不動尊の祠の前に陣取っての眺望は天下一品。北岳と仙丈岳の優美な姿、鳳凰三山の真後ろに気高くそびえる富士山の姿が特に印象的だった。

 しかし何とも風が強い。滞在20分間で頂上退散。往路の冷や汗教訓から、帰路は六万石岩稜の直降コースを下ることにした。しかし半ば雪に覆われた岩場下降のルート選定はなかなか難しい。試行錯誤の連続でその度のルート修正に四苦八苦。ようやく六方石のコルにたどり着いた時は、正直ホッとした。 仙水小屋帰還は16時半であった。