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おりおりの  第9回

(一〇年三月号)転載

作者プロフィール

 柚木 文夫氏

千葉県隊友会会員
習志野支部長
桧町陸幕
平成2年退官
1958年防衛大学卒
元防大山岳部監督
現自衛隊山岳連盟会長

関東古来の名山

 筑 波 山

 筑波山(八七七㍍)は、古来、富士山と並び、雪の富士、紫の筑波と讃えられた関東の名山である。
 スモッグに曇る現在でも、東京のビルから見える独立した山といえば富士と筑波である。
 万葉集にも詠まれ、その歴史の古さの故にこそ、深田久弥が日本百名山の一つに挙げてもいる。

 三月初め、その筑波山に登った。古い仲間との懇親登山である。前夜、筑波山神社門前の宿で懇親会。例によって年を忘れて、よく飲み、よく議論した。

 翌朝七時四十五分出発、神社にお詣りした後、ケーブルカーに沿った登山道を登る。
 杉林の中の単調な登りであるが、丹念に木段が整備されている。  中ノ茶屋の先で、ケーブルカーのトンネルの上を横断し、百人一首に詠われた男女川の水源とかの水場を過ぎ、一登りして九時半、男体・女体鞍部の御幸ヶ原に到達した。  
 広々とした台地にはミヤゲ物屋が立ち並び幻滅である。

 まず左の男体山を往復する。山頂には立派な男体祠があるが、電波中継塔が立ち並ぶ風情はいただけない。
 二〇分で往復して一休みの後、女体山に向かう。約一五分で到着した女体山頂は巨岩が積み重なり女体祠が祀られている。
 関東平野を一望する眺望との触れ込みだが、今回は生憎のモヤの中だった。

 帰路は旧参道をつつじが岡に下る。最初は岩場の下り。北斗岩、裏面大黒、出船入船、弁慶七戻り岩、御胎内潜りなどの巨岩奇石が次々と現れ、飽きることがない。
 弁慶茶屋を経て、つつじが岡公園の広場を過ぎ十二時、ロープウェイ駅のあるつつじが岡に着いた。

 一休みの後、水平道を宿へ戻る。雑木林の中、セメント舗装され殆ど高低差のない遊歩道が延々と筑波山神社まで続く。
 オシャベリを楽しみながら遊歩道をたどり、十三時筑波山神社に帰着。そして筑波ミヤゲは、酔狂にも筑波名物ガマの油。