著者紹介 田尻 洋介氏
千葉県隊友会
市川支部会員
熊本県出身
1962年防衛大学校入学
1967年任官
1999年退官 空自(第3補給処)
東芝電波プロダクツ株式会社を退社した後
2006年から社会保険労務士・行政書士業務に専念

千葉県市川市富浜2-15-1  A-310
田尻社会保険労務士・行政書士事務所
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身近な社会保険のQ&A   第2回


  自衛官定年後の会社勤めを終わり退職した後の「年金受給及び
 健康保険等」の生活設計の基本的な事項について、約10数回
 にわたり専門家が丁寧にアドバイしてもらいます。





年金のもらい忘れ事例

Q   私は、現在71(昭和135月生まれ)です。63歳の時、私立学校を退職し、会社を立ち上げ経営していました。この度、会社をたたむ予定です。ところで、辞めた後の年金手続きはどうなりますか? 又、学校を退職後63歳から私学共済年金をもらっていました。65歳になった時以降、年金が減りその状態で現在まで来ています。今後の年金はふえないのでしょうか?

A   私立学校を退職後63歳から年金をもらっていたが、65歳の時点で年金が減り、そのままで来ているということなので、年金の受給状況を年金事務所で調べてみました。

  その結果、65歳の時点で、「国民年金・厚生年金保険老齢給付年金請求書」の手続きをやってなかったと思われ、本来65歳から貰える老齢厚生年金と老齢基礎年金の給付がなされてないままなっていました。すなわち、65歳からは私学共済から受給する退職共済年金と社会保険庁から貰う老齢厚生年金・老齢基礎年金の3つの年金を貰えるところ、手続きを忘れていたため、退職共済年金のみを受給しあとはもらっていない状態でした。

   その後の顛末ですが、71歳の時点で、厚生年金と国民年金の裁定請求を行う必要があります。年金請求の時効は5年です。この時点での請求には2つの選択肢があります。

   1つ目は通常の請求と2つ目は老齢基礎年金のみ(S17.4.2以降生まれの人は厚生年金も同時に)5年繰下げ請求、すなわち70歳まで繰下げしたとしての請求の方法があります。

   1つ目を選択した場合は、請求時点から5年遡って年金が受給できます。時効により、1年分は失効になり受給できません。1年分の年金額が例えば100万円(老齢基礎年金は79万円と厚生年金21万円)とすると5年分の約500万円が一時金として受給できます。

   2つ目を選択したとすると老齢基礎年金を70歳まで繰下げした扱いとなり、本来貰える老齢基礎年金の188%が、申し出の日の翌月から受給できます。但し、繰下げ請求をした後は遡っての請求変更はできません。老齢基礎年金を70歳から受給したとしたら、75歳時点で65歳からもらった年金総額と一緒になります。但し、70歳の1年間は失効して、請求できませんので、その分が少なくなり、年金総額が同一になるのは更に遅れることになります。

  本人の希望により、今回は1つ目の請求を選択して一件落着しました。しかし、本来貰える金額が全部もらえないという、状況は残りました。本来、手続きすべき時にする必要があるという教訓が残ります。

 〔注〕

   共済年金と厚生年金に加入していると65歳から退職共済年金と老齢厚生年金からそれぞれ老齢基礎年金に定額部分相当額が移管されます。それ故、65歳からは退職共済年金、老齢厚生年金と老齢基礎年金の3つの年金が支給されることになります。これを知らないとこの事例の如く、65歳からもらえるものも、貰えなくなります。極端に言えば死ぬまで、この例のように退職共済年金のみの受給に終わり、老齢厚生年金と老齢基礎年金をもらわない事態が発生することになります。しっかり年金をもらうように心がける必要があります。

    平成22315日 記