著者紹介 田尻 洋介氏
千葉県隊友会
市川支部会員
熊本県出身
1962年防衛大学校入学
1967年任官
1999年退官 空自(第3補給処)
東芝電波プロダクツ株式会社を退社した後
2006年から社会保険労務士・行政書士業務に専念

千葉県市川市富浜2-15-1  A-310
田尻社会保険労務士・行政書士事務所
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身近な社会保険のQ&A   4


  自衛官定年後の会社勤めを終わり退職した後の「年金受給及び
 健康保険等」の生活設計の基本的な事項について、約10数回
 にわたり専門家が丁寧にアドバイしてもらいます。





加給年金額と振替加算額について



 

Q-1 私は自衛隊を定年退職後、会社に勤めています。年金をもらえるようになったら、加給年金額が貰えると聞きました。又、振替加算額との関係はどうなっているか教えてください。

A-1 加給年金額は厚生年金(退職共済年金)の定額部分が支給される年齢から、一定の条件を満たした場合に配偶者と子に対し加算されます。又、加給年金額は、配偶者が65歳に達した以降、配偶者の老齢基礎年金に振替加算額として加算されることになります。

Q-2  加給年金額の加算の要件は?

A-2  次の要件にいずれも該当する時に加算が行われます。

  @ 厚生年金(共済年金)の被保険者期間が20年以上あること。

  (注) 加入期間はそれぞれの制度ごとに判断します。

     厚生年金も共済年金も20年以上あるという場合には、老齢厚生年金に加給年金額は
      加算され、共済年金からの加給年金額は、支給停止となります。

        共済年金のみが加入期間20年で、厚生年金が20年未満の場合は共済年金からの
      加給年金額のみが支給となります。

  A 老齢厚生年金(共済年金)の定額部分の受給権を取得した当時、*1生計を維持していた

 65歳未満の配偶者、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子、
     又
は障害等級1級もしくは2級の障害の状態にある20歳未満の子があること。

*1 配偶者などが850万円(所得が655.5万円)以上の収入を将来にわたって有する(概ね5年)と認められる場合は生計維持とは認められません。

Q-3 加給年金額はいくらですか?

A-3 次の通りです。

    配偶者・・227,900円+配偶者特別加算額
     (例:受給権者S18.4.2以降生まれ⇒168,000円)
    子1人・・227,900円
    子2人・・227,900円+227,900円
    子3人・・3人目以降1人につき75,900円

Q-4 配偶者への加給年金額はどんなとき支給停止されますか?

A-4加給年金額は、加給対象となる配偶者が次の給付を受けるときは、その間、支給停止されます。

 @ 被保険者期間が20年以上の老齢厚生年金(退職共済年金)を受けるとき。

     (注) 夫婦共働きの場合で、どちらも厚生年金期間が20年以上のケースでは、夫婦ともに年金を
  受給すると妻も夫も加給年金額が支給停止となります。しかし、夫
の年金が、在職老齢年金の仕組みにより、
  全額支給停止となっている場合は、年金を実際には受給していませんので、妻の年金に加給年金額が加算されます。

 A 障害厚生年金、障害共済年金又は障害基礎年金を受けるとき。

Q-5 加給年金額と振替加算額の関係はどうなっているのですか?

A-5 配偶者への加給年金額は、加給対象となっている配偶者が65歳に達したときに支給されなくなり、当該配偶者の老齢基礎年金に、振替加算額が支給されます。(大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた配偶者に限ります。)

  注:自衛官を定年し、妻である配偶者が65歳になり、振替加算額が付く様になった時に妻の「国民年金の裁定通知書・ 支給変更通知書」の「配偶者の加給区分」欄に「1」が記入されており、振替加算額がついているかどうかをチェックすることが重要です。
 中には、振替加算額が加算されていない場合があります。

 妻が65歳になると、国民年金がもらえるようになります。当然今までの年金額に比べ多くなり、単純に多くなったと喜んでしまい勝ちですが、その時、冷静にもう一度、振替加算額が付いているかチェックする必要があります。
 
 我々自衛官出身者は年金を共済組合から貰い、加給年金額も共済組合から貰います。妻が65歳になったとき共済組合からの加給年金額が停止し、妻の国民年金に振替加算額が付くことになりますが、妻が夫より年上の時は、妻の特別支給の厚生年金を請求する時(60歳)、夫は年金を貰っていないことになり、夫の年金基礎番号・年金コードが届けられていません。
 この場合は妻が65歳になった時「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」を年金事務所に提出する必要があります。
 提出しないと、振替加算額が付かないことになります。将来に亘り、大損することになる場合があります。年上の妻の場合は、くれぐれもチェックし、妻に振替加算額がついていることを確認してください。 

  なお、障害厚生(共済)年金の1・2級にも加給年金額が加算されますが、配偶者が65歳になった時点で、配偶者の基礎年金に振替加算額が加算されます。

Q-5-1 振替加算額はいくらですか?

A-5-1 振替加算額は、老齢基礎年金の受給権者の生年月日に応じて決められています。

Q-5-2 振替加算額の支給期間は何時までですか?

A-5-2  65歳に到達した月の翌月から老齢基礎年金を受給している期間中は、加算されます。
    65歳以降に離婚した場合でも、又、その後再婚した場合でも加算は継続します。

Q-5-3  老齢基礎年金を繰り上げ、又は繰下げた場合はどうなりますか?

A-5-3  振替加算額は、老齢基礎年金を繰り上げた場合でも、65歳から支給され、繰り下げた場合は、老齢基礎年金と同時に支給が始まります。 

Q-5-4  妻が年上の場合はどうなりますか?

A-5-4  妻の年齢がすでに65歳に到達していたときは、夫が配偶者への加給年金額の受給権を取得した時点で振替加算額が支給されます。

Q-5-5  振替加算がおこなわれない場合はどういう場合ですか?

A-5-5  次の場合は支給停止になります。

   @ 加給年金額加算対象者となっている配偶者が20年以上加入に基づく老齢厚生年金を受給する時は、振替加算額は支給停止になります。

    A 加給年金額加算象者となっている配偶者が、年収850万円を将来に亘って有すると認められる場合、生計維持していたとみなされないため、振替加算は行われません。

                                                       平成22年5月5日